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南西レコード

ぱびろーま3

これを書き終わったわずか数分後、U子おばの孫娘から電話が入った。
いよいよばあちゃんが危ないから、じいちゃんを病院まで連れてきてくれ、とのこと。
私はダッシュでおじーを迎えて病院まで車を飛ばす。
シマから病院まではけっこう距離がある。だからネズミ捕りがいたら間違いなく捕まるスピード。石垣島に来てこんなに車を高速で走らせたことなど一度もない。車の中、おじーとは終始無言だった。

おばはこのひと月ほど前、入院していた病院から出て自宅での訪問看護に切り替えていた。その数週間が家で家族と時間を共にする最後の機会だったのか。1週間前にまた体調がすぐれなくなり、病院に戻ることになった。
その病院に戻る夜、おばは病院に向かう車の中で息子に「もう私は星に向かって歩いていく」と言っていたという。

おばはすべて悟っていた。旦那おじーも何かに気づいていたのか。2人ともどのような気持ちでこの1週間を過ごしていたんだろう。

車をかなり飛ばしたおかげで、いつもの半分以下の時間で病院に到着した。
だが、5分間に合わなかった。おばはすでに事切れていた。
おばーの周りでは、孫娘の次女と三女が涙を拭っていた。長女と長男は毅然としていて、これからおばーを家に連れて帰る段取りに移っている。

「あがよー、あっぱー。がーぶりたな…」(ああ、ばあさんよ。精根尽きてしまったね…)と、おじーはおばに近づき、ゆっくり頭をなでた。

おじーを最後の瞬間に間に合わせてあげられなかったことが最高に悔やまれる。
しかし、おじーはそんなことは大した問題ではない、というような様子にも見える。
年齢を重ねて既に死を達観することができるようになった者の態度の表れか、それとも若い私の身勝手な解釈か。

明日からの葬儀の準備の為、すぐにまたシマに戻る。来た時と同じようにおじーと無言のままで、こんどは車をゆっくりと走らせながら。

外は月がきれい。
宮良湾が青白く照らしだされ、その背景には彫刻のような積乱雲。
ぱびろーま3_a0147023_2030523.jpg

ああ、明日は通夜であさってが告別式か…なんて考えてみてもさっぱり実感がわかない。身近な人の死を一瞬で受け入れられるほど、私の心も頭もまだ熟していない。
がんばれ25歳。




by kooheeee | 2010-07-01 20:26 | シマに暮らす

石垣島東海岸の某集落からいろいろお送りします。
by nanseirec
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